経理部門の明るい未来

今やAIやロボティクス技術のホワイトカラー業務への適用を裏付ける論文として、様々なメディアや論文で引用されている英オックスフォード大学のAI研究者であるマイケル・オズボーン准教授による2014年の論文『雇用の未来‐コンピューター化によって仕事は失われるのか』。
発表当時は「大袈裟では」と言われた内容が、発表から6年が経ってみると、なんとなくその現実味を帯びてきています。その内容は、と言うと、

今後10~20年程度で、 47%の雇用が自動化・機械化される可能性が高い

2025年までに、全世界で1億人以上の知的労働者、もしくは1/3の仕事がロボットを含めたテクノロジーによって置き換わる

というもの。この中には簿記や会計、監査の事務員、及び税務申告代行者が含まれています。論文発表当時、私自身は監査法人(KPMG)でシニアマネジャーをやっていましたので、「将来どうなるんだろう・・・」と一抹の不安を感じたものです。

加えて、昨今のコロナ禍によるリモートワークの推奨と増加で、バックオフィス業務の代表格でもある経理業務は「在宅勤務と親和性が高い」と改めて注目されるようになりました。今後はこの流れは緩まることはあれ、逆行することはないと思われます。

この状況について、経理業務に携わっていらっしゃる方々の中には『自分の仕事が将来なくなるのか』と不安を感じている方もおられると思います。
でも安心してください、やる業務の内容が激変することはあっても、経理という業務部門がなくなることはない、と断言できます。

写真:freepik.com

まず、会計・経理業務の真髄は「ビジネスを数字に置き換える」ということであり、M&Aや海外の会計基準の適用が影響するような極端に難しい取引でなければ、経理の仕事は「誰がやっても同じ決算書ができる」という事実があります。
(経理の水準がこの事実の前提とならない場合を除く)

そうすると、突き放した言い方も知れませんが、これまでの経理担当者の差別化要素は正確かつ迅速に経理処理ができる・決算が組めるということになっていました。でも、その領域は今後、人間以上に得意なITに取って代わられるでしょう。彼らは人の何十倍ものスピードで正確かつ緻密に組み込まれた業務を、モチベーションの低下なくこなすわけですから。
また、その先例となるかもしれませんが、海外では日本以上にクラウド会計ソフトが浸透しており、身近なところで言えば、お隣の韓国では会計ソフトを使えば税務申告書が誰でも作成できてしまうため、経理担当者のみならず、この領域での税理士・会計士の専門性すらほとんどなくなってしまっているという実態があります。

では、経理担当者がこれからの『経理2.0』というべき時代で、どこで付加価値を出すか。まさに前回投稿したコラム「Add valueの定義」に記載したとおり、解決すべき課題を見つける能力であり、またその課題(イシュー)に対する明確な打ち手を繰り出すこと、になります。

もう少し掘り下げましょう。経理部門が他の部門と最も違う特徴は何でしょうか?
お分かりのとおり、経理部門だけが「今足元にあるリアルな数字情報を持っている」という唯一無二な存在である、ということです。数字情報は容赦なく現実を客観的に語ってくれます。
会社の実態をあぶり出すとともに、ポジティブな面で言えば、例えば「いくらまでなら戦略的に赤字を出してもいい」というような様々な経営判断材料を与えてくれます。その数字を様々な切り口から生産するのが経理にしかできない役割になります。社内に経理担当者を差し置いて、会社の数字を知り尽くしている人はいないんです。

また、この能力はマーケットでの人材価値を大きく高めてくれます。大事ではあるものの、誰がやっても結果が同じタスクをルーティーンワークと定義すれば、このような業務に長けた人材は今後頭打ちになります。一方で、今後重宝される人材は「数字を作れることができる」はあくまでスタート地点であり、そこからが腕の見せ所と考えている人材になります。

昨今、外資系企業の採用ポジションとして、猛烈にFP&A(Financial Planning & Analysis)と呼ばれる、数値が分かる経営管理担当の採用ニーズが高まっているのもその現実を如術に表していると言えるでしょう。普通の経理人材よりも報酬レンジは高いです。この流れは早晩中小企業にも波及していくと考えています。

また、欧米に目を向けると、ITスキルに通じた経理担当者は、時間単価にして2倍近く跳ね上がっている、という情報も徐々に伝わってきています。ITと経理業務の親和性から、テクノロジーをうまく使いこなすことで自身の業務効率性を高めるのみならず、アウトプット(成果物)の質も劇的に向上することが立証されています。

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このような新しい時代、経理の活躍の場は減るどころか、増える一方です。もちろん、「急にそんなことを言われてもそのような人材がいない」という場合もあると思います。そこは我々のような外部専門家がお手伝いするところです。経営者は自らのビジネスに特化するのが一番会社にとって有益です。アウトソースではなく、経理人材の強化・仕組みづくり、また、ヘルプデスク的な助言業務, etc…、経理部門を強化する一助として、我々の役割もまた無数にあると確信しています。

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