クイックに理解する「法人税の別表5-1」

前回のコラムで「法人税の別表5-2」についてまとめてみましたが、今回は「別表5-1」を取り扱います。確定申告書は規模や事業によって、100種類を超える申告書を作成する会社もあるくらいですが、中小企業目線で見ると、作成が必要なのは10種類少々であることがほとんどです。そして、その数ある申告書の中で、重要性の観点からツートップなのが所得金額を計算する「別表4」と、この「別表5-1」になります。

別表5の概要

まず「別表5-1はどういうものか」というと、以下のように利益積立金額(赤枠)と資本金等(青枠)の計算に関する明細書の2部構成になっている申告書類です。

図1

別表5-1は「税務上の貸借対照表」と呼ばれている、ということをご存じの方もいらっしゃるかと思います。ただ、財務会計上の貸借対照表(以下B/S)のイメージはあっても、税務基準の貸借対照表というものはなく、『なぜ別表5-1が税務上のB/Sなのか』を説明できる方は、正直多くないと思います。

よって、この別表5-1の入力や計算のHow toよりも、この別表5-1の位置づけや役割から説明した方が全体的な理解が早い(近道になる)と思いますので、取っ掛かりとして、まずは、この別表5-1を作成するための基礎知識をご紹介したいと思います。

利益積立金と別表5-1の位置づけ

まず、この別表5-1の「Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書」(図1の赤枠)を眺めてみると、利益準備金や繰越損益金等の項目があるので、

財務会計上のB/Sの純資産の部にある利益剰余金の変動が記載されている

ということを掴む方も少なくないと思います。

また、別表5-1に記載のある区分27の「納税充当金」= B/S上の「未払法人税等」になりますので、ここから下記の図のとおり、図1で記載がある賞与引当金と未払法人税等が、以下の黄色の利益剰余金に含めて増減が記載されている、というイメージになるかと思います。

図2

理屈はさておき、考え方としてはそのとおりです。ではなぜそのようになるのか?ここで、会計と税務の違いに関する王道の説明、「収益≠益金」「費用≠損金」「利益≠所得」の概念が背景にあります。

  • 賞与引当金の取り扱いは「会計上は費用」「税務上は損金不算入」。会計上は損益計算書(以下P/L)に登場しますが、税務上は損金扱いにはなりませんので、所得計算上、所得が加算されます。
  • 法人税等も、会計上のP/Lでは税引前当期純利益から控除される項目になっていますが、税務上は所得計算に含めません。

よって、仮に会計上の財務諸表を税務上の財務諸表に組み替えるのであれば、以下の修正仕訳が必要になるわけです。

借方)賞与引当金 (B/S) XXX     貸方)賞与引当金繰入額(P/L) XXX     
借方)未払法人税等(B/S) XXX     貸方)法人税等(P/L)     XXX

理解のポイントはここです。貸方の費用項目(太字)はP/L項目ですが、別表5-1の考え方は、P/Lの当期純利益がB/Sの繰越利益剰余金としてプールされていくことに着目し、個別の勘定科目ではなく、最終的な「利益剰余金」、税務上の「利益積立金」でこれらの修正仕訳を拾っていることを意味します。

よって、税務目線で仕訳を認識すると

借方)賞与引当金 (B/S) XXX     貸方)利益積立金(加算) XXX      
借方)未払法人税等(B/S) XXX     貸方)利益積立金(加算) XXX

になります。よって、「利益積立金額の計算に関する明細書」として、この利益積立金が増減したことを記録・管理する必要があるというわけです。

見方を異にすれば、所得計算に関連するB/S項目(上記仕訳の借方)だけを抜き出して表にしたもの、とも言えます。税務上、B/Sは資産、負債、純資産という財務会計でよく見る形式で作成する必要がなく、それを税務当局も求めていないというわけです。※

よって、これが別表5-1が「税務上のB/S」と言われる所以になります。

※ 税務で大切なのは何よりも「所得計算」なので、税務上、資産や負債の残高の金額に意味はありません。(必要なら申告書に添付される会計上のB/Sを見れば、大枠のB/Sの内容は把握できる)

利益積立金の種類

利益積立金額の計算に関する明細書の中身ですが、大きく分けると以下の3種類になります。

図3

青色の「利益剰余金項目」は、簡単に言うと、株主資本等変動計算書でまとめられている当期変動額を転記するイメージになります。

赤色の「税務否認項目」は上記でも説明した、税務上否認することによって利益積立金を増減させる項目の変動になります。

そして、黄色はB/Sに残高として記載のある未払法人税等に該当する納税充当金と、1年間で納税義務が「いくら発生し、実際にいくら納めたか」の記録である未納法人税等の2つから構成される「税金項目」になります。

別表5-1で税金項目を取り扱う意味

納税充当金は、「税務上は負債ではないため、負債及び費用ではない」として資本項目にある利益積立金として取り扱うため、別表5-1に記載する、と説明しました。すなわち、会計と税務とで取り扱いに差がある納税充当金=未払法人税等の増減も、賞与引当金同様に管理されることになります。

但し、納税充当金は賞与引当金のような他の税務否認項目とは性質が異なります。損金算入される事業税以外は、永久に税金計算の根拠となる損金に含まることはありません。正確に言うと、税金の扱いは「利益積立金の処分」になります。また、そもそも、利益積立金とは「税引き後の留保所得」を意味し、この観点からも法人税や地方税は所得ではないため、留保所得にはなり得ない、と言えるのです。

よって、これらの税金を利益積立金として別表5-1に残すことに問題が出てきます。

そこで、納税充当金が全額「差引合計額」(図3の31)に反映されるのではなく、そこから所得に含まれない法人税や地方法人税、都道府県民税などの税金を納税に応じて控除している、という図式になるわけです。(ここが別表5-1を分かりにくいものにしています)

実際に記載金額のバックデータを示すと、以下のとおりになります。

図4

図4の別表5-1の中の色と、税金の納付状況の表の色がそれぞれリンクしている形になっています。これを見れば一目瞭然です、「未納法人税等」の欄(図4のオレンジの枠内)で事業税以外の税金の動きをすべて記入し、納税充当金から事業税以外の税金がプラスマイナスゼロになるようになっています。(厳密には税務調査の追徴等でピッタリにならないこともあります)

結果的に、複雑な税務調整項目がなければ、会計上の利益剰余金(図2の黄色)の合計額に、別表5-1における税務否認項目(図3の赤色)と期末の未払事業税(図4「税金の納付状況」の(c)の事業税)を合計した金額が別表5-1の31「差引合計額」に一致することになります。

資本金等の額の計算に関する明細書

別表5-1のⅠとして、会計上のB/Sの利益剰余金項目の増減が取り扱われましたが、このⅡの領域では、純資産の残りの資本金及び資本剰余金に関する増減が記載されます。但し、中小企業の目線で実務的な話をすれば、ほとんどの企業では資本金、資本準備金の金額を書くだけで、その他の項目を記載することは皆無だと思います。

ちなみに大企業のケースでここに追加される項目としては、その他資本剰余金、自己株式などがあります。

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