ビジュアルで理解する「利益相反取引」

最近、弊社クライアントの利益相反取引の論点について、時間を割いて従事し、業務フローや新しい制度構築に寄与しました。なかなかとっつきにくい論点であることから、今一度、制度趣旨から理解し、利益相反取引で求められる取締役会承認の有無について、ケースごとに整理しました。

今回はこの利益相反取引について、6つのケースを用いて、解説します。

利益相反取引の制限に関する制度趣旨

取締役が会社と自身の利益が相反する取引(主に会社の利益を犠牲にして、自己または第三者の利益を図るような取引)を会社に行わせることを利益相反取引といいます。

会社法においては、第356条1項2号および3号において、直接取引と間接取引という二つの類型に関して規定し、このような利益相反取引を行う場合には、株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)において、その取引について重要な事実を開示して、その承認を受ける必要がある、と定めています。

様々なケースにおける利益相反取引への該当の有無の要約

まず、紹介する6つのケースの要約は以下のとおりです。自社の取締役本人と取引を行う場合、または自社の取締役が取引の相手先で代表行為を行うことができる権限を有する代表取締役を兼任している場合に自社で取締役会の承認が必要となります。

上表よりも見てとれるように、利益相反取引決議の大原則は、相手方に有利になり、損失を被る側がリスクヘッジのために意思決定機関の決議が必要となり、慎重な判断が求められるということです。

ケース1:会社と取締役個人との取引を行う場合

直接取引による利益相反取引の例としては、以下の5つが挙げられますが、取締役本人と会社が取引を行うのは典型的な利益相反取引に該当します(すべて会社が損をする可能性がある)。

  1. 取締役と会社間で行われる売買契約
  2. 会社から取締役へ行われる贈与
  3. 取締役からの利息がついた会社への金銭貸付
  4. 会社から取締役へ行われる債務免除
  5. 取締役が受取人となる会社からの約束手形の振り出し

ケース2:取引を行う2社の代表取締役が同一の場合

取締役本人と会社が行わない場合はすべて間接取引に該当するか、と言えば、答えは「否」で、取締役が「第三者のために」(=第三者を契約当事者として)取引を行う場合には、直接取引に該当します。

ケース3:共同代表取締役で代表権のない代取と、取引相手の代取を兼務している場合

TF法律事務所の「こちらビジネス法務相談室」に詳細が記載されているように、「会社を代表する」とは、必ずしも代表取締役であることは必要ではなく、該当する契約について会社を代表するか否かで判断される点には注意が必要です。

ケース4:取引を行う2社で代表取締役と取締役を兼務する場合

取締役が取引を行う代表権がなければ、第三者のために会社と取引するときに該当しないことから、利益相反取引の承認は不要となります。

ケース5:取引を行う2社で取締役を兼務する場合

取引を行う両社ともに役員として従事しているケースにおいて、一見すると利益相反取引に該当するように思いますが、どちらも会社のための代表行為を行えない場合は、利益相反取引としての承認は不要になります。

ケース6:取引を行う2社(親子関係あり)で代表取締役を兼務する場合

最高裁昭和45年8月20日判決において、100%の資本関係がある場合、実質的な利害の対立はないことから、親子関係にある会社においては、代表行為を行うことができる取締役の兼務があったとしても、両社において、取締役会承認は不要となります。

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