クイックに理解する「消費税の課税取引」

インボイス制度の導入に伴い、ひときわ注目を集めている事業に関する消費税。この消費税について、実務の中でよく耳にする声は、消費税の課税対象かどうかの判断について、よく「複雑でイマイチ理解しきれない」というものでした。今回、その声を受けて、消費税の課税取引がどういうものか、についてコンパクトにまとめてみることにしました。

なお、説明を簡単にするため、国内に本社を有する一般消費財メーカーという前提で解説します。

最初の判断:不課税取引かどうか

消費税が課税されるためには、いわゆる課税4要件といわれる要件をすべて満たす必要があります。これが先ほど、「国内に本社を有する一般消費財メーカー」を主役とした理由です。この業種の会社であれば、事業を生業とする法人で、対価を得て製品を販売しているため、4要件のうち3要件は無条件で満たすことになります。(参考の*1参照)

つまり、法人が行う取引はすべて事業性があると推定されるため、全取引が消費税の課税対象となるように考えられます。そこをスタート地点として、まず最初の判断基準として、この会社の取引が「国内で行われる取引」か、または「わざわざ海外に出向いて行う取引」か、で区分されることになります。詳細は下記のとおりです。

上図のとおり、海外で開催される展示会にわざわざ商品を持ち込んで、そこで商談を行い、日本から持参した商品を販売するような取引は、消費税は発生しないことになります。

この根拠は消費税には「消費地課税主義」というものがあり、海外が消費地の場合には日本の消費税は課税されないことになります。これは以前に公開したコラム『クイックに理解する「消費税還付の仕組み』でもご紹介させていただいています。

これに伴い、海外現地で販売した取引については、そもそも消費税の課税対象とはなり得ないことから、不課税取引(Un-taxable)となります。

次の判断:非課税取引かどうか

不課税取引を除く、法人が対価を得て行う取引は、すべて「国内」取引となりますので、すべて課税対象取引とみなされるようになると思われますが、次のステップとして「非課税取引かどうか」の判断が入ります。

本来は消費税を掛けなくてはいけない取引ではあるものの、消費税の性格から課税することに馴染まないものや、社会的政策な配慮から消費税を課さないこととされた取引は、非課税取引(Non-taxable)として整理されることになっています。

ちなみに、不課税と非課税という2つの用語が多くの経理パーソンを混乱させる原因になっていますが、そもそもTaxableではないとする「Un-taxable」が不課税取引、形式的にはTaxable(課税対象)だけど、後付けで課税性を否定(Non)する「Non-taxable」が非課税取引と覚えていただければいいでしょう。

1. 税の性格上課税取引にしない取引

列挙した以下の取引は、すべて非課税取引として法律により決められている取引となります。消費行為に馴染まないため、消費税を課すべき取引ではない、と言えます。

実務上、間違いやすいのは郵便切手や商品券ではないかと思います。これらは購入時は非課税取引ですが、使用時に「課税取引」となります。

課税対象の取引の発生(例えばハガキの郵送)に対して、先に切手代として金銭を支払って取得した切手を貼ることで、郵送料を支払ったという整理になるからです。言い換えると、ハガキをポストに入れるだけで宛先に届きますが、ハガキを届けるというサービスに関して、ポストに入れる際にお金は支払いません。先に支払った切手代がハガキを届けるサービスに対する支払いとなるのです。

2. 社会的政策配慮により課税性を否定した取引

極めて公共サービスに類似する取引を中心に、本来は消費税の課税対象の取引であるものの、法律により課税しないことが定められた取引となります。

こちらについては、このコラムの前提である「国内に本社を有する一般消費財メーカー」がビジネスとして行う取引ではありませんので、検討不要となります。

最後の判断:免税取引かどうか

不課税取引を除く、法人が対価を得て行う取引、すなわち「国内」取引のうち、上述の非課税取引を除いたすべての取引がさらに絞り込まれた課税対象取引となりますが、最後のステップとして「免税取引かどうか」の判断が存在することになります。

現行、輸出取引が免税取引となりますが、輸出取引は消費税が発生しないのではなく、発生はしますが、「免除(Exempt)してあげる取引」として取り扱われることになります。また、人によっては輸出取引に関する消費税率は0%と考えることも可能です。

では、なぜ輸出取引が免税になるか、といえば、これは先述の不課税取引のところで紹介したように、輸出された製商品は輸出先の海外で消費されるため、消費地課税主義から日本の消費税は課されないことによります。

不課税取引と免税取引の違い

消費地課税主義の観点から、海外の消費者に販売した場合は、日本の消費税が課されない点について、不課税取引の「海外現地販売」と「輸出販売」は同じです。しかし、なぜか前者は不課税、後者は課税取引だけど「免税」、という扱いがなされ、処理を異にします。これはどうしてでしょうか?

この違いは輸出の場合、日本国内の保税地域での手続き完了で輸出が成立することに起因します。つまり、輸出取引に関して、販売先の消費者は海外にいますが、輸出取引自体は日本国内で完了する、という点で、「国内取引」と整理されることになります。

日本のA社が米国のB Corp.に販売した取引について、海外現地販売(不課税取引)と輸出(課税取引だが免税取引)をそれぞれ図で整理すると以下のとおりです。

輸入取引の取り扱い

上記は輸出取引でしたが、輸入取引はどうでしょうか?輸入取引は輸出取引と異なり、事業者かどうかの判断基準がないという相違点がありますが、このコラムの前提である「国内に本社を有する一般消費財メーカー」では関係ないことになります。

よって、輸入取引で仕入れた製商品は、消費地課税主義の観点からは全て日本国内での消費となるため、不課税取引および免税取引は発生せず、判断要素は、課税取引か非課税取引かだけとなります。

以下、先述の輸出取引の図を用いて輸入取引を説明したものになります。


<参考>

*1 消費税課税の要件として以下のすべてを満たすことが求められます。

  1. 国内において行うもの(国内取引)であること
  2. 事業者が事業として行うものであること
  3. 対価を得て行うものであること
  4. 資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供であること

税理士/公認会計士 大内 宏貴

2023-04-09|タグ: ,
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