法人税の確定申告は税務の専門家でなければ、1年に1回(事業年度終了後の決算時期)しか触れないため、その時点では理解しても、次に思い出すのが1年後になるため、多くの方が苦労されています。
『パッと見て思い出せるものがあればいいのに』
実際に前回の理解を忘れた1年後に思い出すとっかかりとして、皆さん、Googleで検索しながら作業をされることかと思いますが(これからは生成AIかもしれませんが)、税務関係のサイトはなぜか文字だらけのものが多い印象があります。そこで今回、パッと思い出せるような記事をコラムとしてアップしていこうと思います。まずは第1回として、「租税公課の納付状況等に関する明細書」として知られる別表5-2から始めていきたいと思います。

金額の入力手順
別表5-2の上部は各種税金のフロー、すなわち期首から期末までの金額の動きがまとめられます。

縦は「1~5」、横は「①~⑥」の数字で表されたマスがあり、それぞれにどのような金額が入るかを理解できれば、恐れるに足りずです。
ただ、その前提として理解しておきたいのは「当期中の納税額」に位置づけられる③~⑤の区別です。

以下の表にまとめましたが、コンプライアンスの観点から問題となる前期末に税額計算済の税額の未納付(No.3)や、そもそもあり得ない年度末計算なのに期中で納付済といったもの(No.7~8)を「該当なし」とすると、実質は赤のチェックマークに該当するものだけになります。
上図で一目でわかるように、チェックマークが複数発生している「中間納付済であるものの中間還付がある取引」(オレンジのハイライト)が別表5-2の記載で分かりにくい処理となります。
前期末に計算した未払法人税等の納税
前期末のB/Sに未払いの負債として残高が残っている「未払法人税等」は、申告書上「納税充当金」の名称で取り扱われます。上記のサンプルでいうと、6,594,300円は前期に税額計算済みで、P/Lにも法人税等として既に計上済み、但し未納、という状態のものなので、税金納付時は「未納税金を当期に納税したので、充当金を取り崩す」という整理になります。赤い矢印の①のようにマスでいうと2-③に記載します。
中間納付と中間還付
中間納付は文字どおり、「当期に税額計算済みで、さらに税金自体も納付済みのもの」ですが、年度通気の業績による当期の納税額により、上図1のNo.4(+もれなくNo.9もセット)になるか、No.5になるかが決まります。
No.4+No.9のケースになるのは以下のような一般的なケースに該当します。

このCase1における期中で発生する法人税等の会計仕訳の流れは以下のとおりです。

図2で言えば、黄色のハイライト部分が6,639,400円に該当します。そして、別表5-2の記載場所については、仮払金の6,000,000円は⑤の損金経理、未払分の6,639,400円は「納税充当金を積み立てた」として⑥の未納税額に記載することになります。
では、次にCase2を説明したいと思います。

数字があった方が分かりやすいと思いますので、例として、
- 中間納付額は261,200円
- 当期の通期の税額は、業績不振に伴い、中間納付額の半分以下の130,200円
になったケースで説明したいと思います。

還付の場合、『中間納付として納めた金額と年額税額の差額全額が返還されるので、年度末に追加で納付する税金はない』と考えるのは誤りで、年間の均等割は必ず半分の追加納付が発生する点は注意が必要です(上記の35,000円)。
つまり、上図3に示すとおり、還付と納付の両方のポジションが発生しますので、別表5-2も年額税額>中間納付額の時と比して、複雑になります。図3の金額を実際に別表5-2に記載すると以下のようになります。

別表5-2と差額分析表を色で関連付けてみましたが、道府県民税の欄が特に複雑になっています。
結果、⑤の「損金経理による納付」にはP/L上の法人税等の金額が記載されるとともに、中間納付とP/L計上額との差額、すなわち還付の金額が④の「仮払経理による納付」で集計されることになります。裏返せば、中間還付が発生しない税金計算においては、この④「仮払経理による納付」の欄に数字が入ることはないとも言えます。
こちらのCaseでも、会計仕訳とそれぞれの数字の出所を示すと以下のようになります(集計は黄色部分のみ)。

事業税の特殊性から生じる記載の注意点
法人税や道府県民税・市町村民税は別表5-2の記載ルールに違いはありませんが、一点、事業税では記載方法が異なります。税務上の事業税の特徴は
- 法人税などとは異なり、損金算入の税金であること
- 事業税は未払計上が認められておらず、現金主義で損金算入されること
がその理由です。
別表5-2における事業税の記載箇所のサンプルはこちらになります。

事業税の前期未納分は未払計上されない、という特性から、前期の事業税は黄色の「①期首現在未納税額」欄ではなく、赤枠の「②当期発生税額」の欄に記載することになります。期末については、そもそも他の税金の欄にある当期確定分の記載欄がなく、期末現在未納税額は物理的に記載できないことになっています。
「納税充当金の計算」の欄との数字の繋がり
税金計算のソフトを使うと自動で転記される運用になっていますが、数字の繋がりを示すと以下のようになります。
オレンジの欄の合計額が30の期首納税充当金の金額になり、31は当期発生・期末未払いの税額が入ります(グレーの欄)。そして、34~37の取り崩し額については、「③充当金取崩しによる納付」に記載のある金額が入ります。
なお、先ほどのCase2の中間還付が発生する場合は、そもそも未払税金が発生しませんので、期首の残高(31)と(34)(35)の取崩額の合計で相殺され、(41)はキレイにゼロになります。
すなわち、数字で見方を変えれば、③以外の欄は、納税充当金の増減とは直接関係がないことを意味しています。
別表4との関係図
別表5-2と別表4がどのように繋がっているかも確認しましょう。
法人税(青枠)、道府県民税と市町村民税(ともに赤枠)の3つは元々損金不算入の税金ですので、課税所得計算に関係しない「③充当金取崩しによる納付」と「④仮払経理による納付」に記載のある金額については、調整は不要ですが、「⑤損金経理による納付」に記載した金額を別表4で加算しないといけません。

別表4上、1の「当期利益又は当期欠損の額」の金額は、法人税等の税金控除後の金額であり、ここで加算しないと、税金計算のもとになる課税所得がこの税金分小さくなってしまいます。
また、当期の税金の未払分は別表5-2)の31の金額(黄枠)であり、これも上記と同じ理由で損金不算入のため、課税所得を増加させるために、別表4で加算します。
一方、事業税(ベージュ枠)については、上記3つの税金とは異なり、損金算入される税金です。よって、「⑤損金経理による納付」の欄に記載された金額は調整不要ですが、「③充当金取崩しによる納付」と「④仮払経理による納付」に金額がある場合は、逆に加減算の対象となります。

これらの考え方は、その他の税金についても同様です。すなわち、
損金算入される税金:
「③充当金取崩しによる納付」と「④仮払経理による納付」に記載のある金額を別表4上で減算する
損金不算入の税金:
「⑤損金経理による納付」に記載がある場合、別表4上で加算処理を行い、損金算入された影響を取り消す
必要が出てきます。
税理士/公認会計士 大内 宏貴
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