読み手を引き付けるストーリー展開

仕事柄、これまで数多くのアウトプットを作成してきましたが、そのアウトプットは、世間一般に「作るのに時間ばかりかかって生産性が悪い」とのご批判はあるパワーポイントでの成果物が圧倒的に多いです。そして、このパワーポイントがプレゼン能力に直結するため、資料の出来がプレゼンの出来栄えを大きく左右します。

ダメなプレゼンの代表例として、「下を向いて自信なさげに話す」などといった話し方にフォーカスが当たることが多いですが、ダメな資料がプレゼンの質を下げているケースも決して少なくないです。フォントや色の使い方、絵やグラフのセンスなども当然見やすさに影響しますが、何と言っても「話の分かりやすさ」、より具体的に言えば

「読み手・聞き手の関心を引き続ける話の流れ」

が重要になってきます。今日はこの話です。

写真:freepik.com

まず、ストーリー展開は時代が変われど不変である、と言うのが私の見解です。多少バリエーションをもって順番を変えたりしますが、鉄板のストーリーはバーバラ・ミント女史の最高傑作『考える技術・書く技術』(ダイヤモンド社:1999/3/1)で紹介された「状況」「複雑化」「疑問」「答え(打ち手)」、この4つです。それぞれの英単語の頭文字を取ってS-C-Q-A、これは提案の際のスキルと言うだけではなく、ビジネス一般、いや、私生活でも使える完全無欠のセオリーであるとさえ思っています。

まず話の出だしは、読み手・聞き手がよく知っている「状況(Situation)」の認識合わせです。そして、この共通認識の「状況」の中で、何かが発生し、事を複雑にします。これを「複雑化(Complication)」と呼びます。

この複雑化が発生する中で、読み手・聞き手は「疑問(Question)」を抱き、呼び起こすことになり、解決を欲します。だからこそ、この疑問の後に来るのは「答え(Answer)」になるわけです。

シンプルに言えば、これが最強のストーリー展開法で、私が行う提案はほぼこの流れに沿って行っています。文書であっても同様で、この方法により、とても短時間でシンプルな文書を書けるようになります。

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そして、簡潔に各ポイントでの秘訣を付け加えるとするならば、以下のとおりとなります。

1.「状況」は知識を与えるものではなく、既に読み手・聞き手が知っていることを思い起こさせることが目的です。よって、改めて図やグラフをちりばめて説明する必要はないです。

2.「複雑化」はこれまで平和だった、または無風だった状況を緊張させ、疑問の引き金となる事象を指します。言葉を簡単に言えば、「話をややこしくしている要素」とも言えます。

3.「疑問」こそが書き手・話し手の中心軸になります。解決すべき論点になります。そして、この論点は大きく4つに集約できると言われています。

  • 何をすべきか?(What to do:解決策が分からないケース)
  • どのように実行すべきか?(How to do:進め方が分からないケース)
  • 本当に実行すべきか?(Yes or no:解決策が提案されているケース)
  • なぜそのようなことが起こったのか?(Why happen)

4. 「答え」については、問題がシンプルに定義されていれば、複数出てきようがありません。よって選択肢はなく、上記の4つの疑問について、それぞれ「これをすべき」「こうすべき」「はい(いいえ)」そして、「~だからです」となります。なので、本来であれば、複数の解答が出てくるはずがないことになります。

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前述の『考える技術・書く技術』に記載されている有名な例を挙げると、このようになります。
状況  = 仕事量が増加し、残業と休日出勤が繰り返されている
複雑化 = システム化するしかないが、導入コストはかなり高額に及ぶ
疑問  = 承認すべきかどうか?
答え  = 早急に承認すべき。理由は~ 

上記で述べたとおり、疑問点が研ぎ澄まされればされるほど、回答もシンプルなものになっています。

繰り返しになりますが、この流れが最もシンプルで分かりやすく、そして説得力があります。私自身もまだまだ経験不足だった頃、『文書作成・プレゼンはいかなる時も読み手本位でなければならない』とバーバラ・ミント女史の著書にある一言で学びましたし、同様のことを当時の上司に何度も言われました。特に「書く」という行為は、読み手のために行うのだ、とも。

ここで紹介した考え方が、皆さんの文書やプレゼンが、短時間で歯切れのよい、分かりやすいものになるための一助になれば幸いです。

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