分からない時ほど仮説が大事

本屋に行けば、「仮説思考」「仮説力」「仮説検証力」などの様々な名前で、仮説立て・検証を繰り返すロジカルシンキングに関する書籍が置かれています。このコラムを読まれている方々の中にも一度はこの手の本を手に取って勉強された方が多いと思います。

ただ、実務でこの仮説検証型の考え方・思考方法を使われている方は正直、そんなに多くないと思っています。正直、本を読んだだけで身に付くものでもないし、実際に私自身、コンサルファームで研修マテリアルを作って研修をしていましたが、研修で講師をされた他の方々、また上のパートナーやディレクタークラスのほぼ全員が

『研修でこのような思考法が身に付くことはない』

と考えていました。それだけ、一朝一夕で習得できるほど簡単なものではないのは事実です。

写真:freepik.com

でも、この思考法があると仕事のクオリティーが格段に上がります。特に、言葉を選ばずに言うと、自分自身が課題について分かっていない方々から問い合わせや課題を受ける時に大いに役立ちます。

私自身の経験で一番役立ったのが、国際会計基準(IFRS)のリース会計基準の導入支援に関するプロジェクトでした。『各方面から「IFRS16号が施行されると大変なことになる」と聞くが、実際にどのような影響があるか分からない』というクライアントからの依頼で、関与させて頂きましたが、特に細かいリクエストもなく、こちらでクライアントが知りたい情報について仮説立てを行わないと、報酬に見合った付加価値が出せない状態でした。

そんな中、会計専門家のメンバーとのプロジェクトだったので、「リース基準を分かりやすく説明しよう」という声が上がりましたが、チーム内で議論・ブレストを重ね、まずは仮説立てをして答えを出すべきイシューを明確にすることにしました。

『新しいリース基準により財務数値や各種KPIが軒並み悪化するのではないか』
『利益影響も数十億レベルではなく、数百億円規模になるのではないか』
『現行のシステムや固定資産管理体制だと、早晩パンクするのではないか』
『国内だけでなく、海外子会社までの影響を考えると、単なる会計処理の話ではなく、ビジネスのオペレーションにまで大きな影響を及ぼすのではないか』

これくらいまで明確にイシューとなるであろう仮説を立ててプロとしての見解や分析結果を示すことにこそ、価値があるのではないか、そう考えたのです。
また、方向性が見えると、クライアントも自分たちが知りたいことがより明確になり、『○○についてもご意見を頂きたい』等、より具体的な依頼を頂くようになり、我々の生産性もグッと上がりました。

一流のコンサルタントの方々は共通して『問いを立てる』ことに長けた人が多い、と言われます。問いを立てることで初めて、「答えを出す必要のあるイシューは何か」、「答えを出すために必要な情報・分析すべきことは何か」、また「生み出された見解や分析結果が十分なのかどうか」が全部見えないと満足いくパフォーマンスが出せないのは事実です。 

我々の社名「Bespoke」には、丁寧な会話を積み重ねるという理念があります。まさに上記のような仮説立ては必要不可欠な要素になります。そのような会話を重ねることで、クライアントの皆さんが本当に知りたかった事、また解決したいことを明確にしたいと考えています。

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