市場規模指標「TAM/SAM/SOM」

新規事業や資金調達の際、最も骨を折る作業は、売り込むビジネスアイデアが経済的に実現可能であり、資金提供者や投資家に『このビジネスは資金を提供すべき価値があります』と説得することです。そしてその際、出資を検討する会社の上層部や投資家のすべてが判断材料として求める情報は、投資に対する確実なリターンの有無を見極めるための合理的に算出された市場規模予測になります。ここに、今回のテーマであるTAM、SAM、SOMの概念が登場します。

TAM/SAM/SOMの指標の定義

  • TAM (Total Addressable Market) :サービスや製品を販売することで、ビジネスアイデアが生み出すことのできる最大の市場規模/収益はどれくらいか?
  • SAM (Service Addressable Market) : TAMの中で、自社のサービスがターゲットにできる市場セグメントはどのくらいの大きさか?
  • SOM (Service Obtainable Market) : 4-5年後に自社のサービスで獲得できるSAM内の現実的な市場部分はどのくらいか?

TAM、SAM、SOMは、ビジネスプランの収益予測の一部として、優れた市場規模の指標を開発することで最もよく説明できる指標と言われており、意思決定者に提案するアイデアの価値と実行可能性を示し、それらについて判断を可能とします。

TAM/SAM/SOMの比較図 – 筆者作成

TAM/SAM/SOMのビジネスプランにおける役割

まず、TAMについては、何よりも、「製品・サービスの総市場規模」と「想定しうる最大の成長性」と言えます。しかしながら、その市場には既に競合他社が参入していて、一部のシェアが奪われている可能性があります。そこで、次の指標として、実際に我々の製品やサービスを必要とし、お金を払ってくれるお客様の存在規模が我々の理想とする市場と言えます。これがSAMです。

SAMは上記に記載のとおり、製品やサービスを実際に提供しうる市場規模のことであり、言い換えると、TAMのうち、実際に顧客になってくれるだろう層の市場規模のことです。SAMは、我々がサービスを提供できる特定の市場において、参入しているすべての企業が販売できる特定の製品(またはサービス)の総販売量と定義できます。

SAMは、短期的および中期的に得られる収益のシェアを判断する貴重な指標となります。よって、投資家にいくらTAMの大きさをアピールしても、そのTAM内でSAMを成長させる仕組みがなければ意味がなく、むしろ、どのようにSAMを大きくしていくかを戦略的にアピールしていくことが必要となります。

※参考までに、TAMおよびSAMのAM部分、「Addressable Market」とは、マーケティングの概念の一つで、製品やサービスに興味を持ってもらい、将来の顧客になる可能性のある特定のグループのことを指します。

写真:freepik.com

そして、SAMの成長戦略を描く中で、ビジネスの最初の数年間で現実的に到達できるSAMのサブセットをターゲットにしたものがSOMになります。資金調達を行う場合、投資家は企業が現実的な目標を持っていることを期待し、その目標を達成できるかどうかで判断することになりますので、この短期的な目標であるSOMは、かなり重要な指標となります。

投資家にとってのTAM/SAM/SOM

投資家の立場から見たこれらの3指標は、一般的に以下の判断基準に資すると言われています。

  • 投資リスクの低減・・・SAMとSOM
  • アップサイドの可能性評価・・・TAM

そして、これらの指標の精度を上げるためには、自社のビジネスの可能性を正しく認識することが不可欠となります。これはよく説明されている例になりますが、Uberは社内定義で、自社の市場は走行メーターがあるものすべてと考えられていました。タクシーだけではなく、配送サービス、運搬などです。これらは現在、UberEatsやUberFreight(現在欧州全域で展開中)で実現しています。

すなわち、UberのTAMは、世界のタクシー市場の規模だけではなく、すべての輸送領域となります。

このUberの例が示すように、自社のTAM(Total Addressable Market)を把握するためには、自社をどのように定義し、どこまで行けると信じているかを考える必要があります。

写真:freepik.com

これに対して、SOMについては、より具体的な前提条件の説明が求められます。例えば、以下のような項目が指標としては一般的です。

  • 価格
  • 利益率
  • トランザクション/購入の頻度
  • 自社の業界における取引/購入の平均金額
  • 数ヶ月または1年など、ある期間内に獲得する予定の顧客数

これを弊社も認定アドバイザーを務めるfreee社のケースで見てみましょう。freee社では以下の3枚のチャートでこのSOM実現のサポート資料としています。
(以下すべて、freee社の「成長可能性に関する説明資料」より抜粋)

  1. 収益性の向上実績を示す資料
  1. 売上高とARRの成長のトラックレコード
  1. 低い解約率と高い既存顧客維持率

SOMの数字は最も現実的な数字として取り扱われます(そのまま売上目標や利益目標として取り扱われるケースもあり)。ボトムアップの計算の積み上げであるため、セットで具体的な獲得手法まで示す必要があり、その前提で強みとなっているトラックレコードは説明の説得力を増す要素になります。

出資者に期待と実現可能性を数値で見せる

市場規模の推定は、既存企業にとってもスタートアップ企業にとっても必要不可欠なものです。そして、このコラムでの取り扱ったTAM、SAM、SOMといった、市場規模を推定するための確立されたモデルは投資家に好まれています。この3指標を上手く説明することで、投資家が誤解するリスクを減らすとともに、彼らにビジネスチャンスを評価するためのベースラインとなるデータを提供し、短期、中期、長期の成長の可能性を明確にします。

そして、この3指標については、値の大きさも大事ですが、それ以上に精度の高いロジックから算出された蓋然性(算定しうる範囲での正確さ)に注目することが非常に重要となります。

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です