クイックに理解する「議事録の取り方」

コンサル業界はもちろんのこと、事業会社でも新人や若手の仕事として任されることの多い議事録作成。考える作業というよりは議論の内容を書き留めていくだけに思われがちですが、この議事録作成ほど大変で奥深く、個人のスキルや実力が如実に表れる業務はないと思っています。

様々なコンサル関係者と話をすることがありますが、皆さん口を揃えて

『最初、議事録作成で泣きそうになった(とても苦労した)』
『議事録作成が一番鍛えられる』
『議事録を十分に作成できない人は、ほぼまともなレポートを作成できない』
『議事録作成とデータ分析ができないコンサルは使えない』
『会議の議事録を分かりやすく構造化する等、文章の中にセンスが垣間見れる』

と議事録について熱く語り、ほぼすべての方が議事録作成の重要性を説かれます。

そんな私も、議事録に関する想い出はさまざまあります。監査法人では、議事録の取り方・作法を特に教わらなかったので、ある意味我流で作成していましたが、コンサルファームに移って、体系立てられた議事録に感銘を受けたこと、また、自分が作成した議事録のドラフトをディレクターにレビューしてもらったときに、『全然イケていない』とダメ出しを食らい、修正で真っ赤になった自分の議事録を見て、ショックを受けたこともありました。

また、議事録の読み手として、ジュニアのメンバーと一緒にクライアントとの会議に参加した際に、レビューに上がってくる議事録の内容に唖然としたこともありました。

そんなコンサルワークとは切っても切り離せない『議事録作成』について、今回は要点をまとめてみたいと思います。

議事録を理解する 

議事録のように、他者の発言を文字起こしする作業として、学生時代に授業でよく行っていた「ノートテイキング」と、会議等にボイスレコーダーを持ち込んで録音した発言を文字化していく「テープ起こし」があります。議事録を本格的に任されるようになったとき、どうしてもこのノートテイキングとテープ起こしのような書き方をしてしまい、作成された議事録を見た上司から「分かりにくい」「このアクションの主体は誰?」等、矢継ぎ早の指摘を受ける経験をされた方は多いと思います。

違いを比較図で示すと以下のとおりとなります。

議事録の特徴として、他人に読まれるものであること、また、発言内容をダラダラ文書化するものではなく、ポイントを要約して記載するものであること、という理解が必要です。ここが理解できていないと、上記のような、読みにくく冗長な議事録を生み出してしまうことになります。

一方、「議事録って所詮、会議の備忘録でしょ」という人もいますが、そのようなあってもなくてもいいメモに留まらない、議事録作成には明確かつ戦略的な目的があります。

頭文字を取って「CARE」(ケア)と呼ばれる、大きく分けて4つの目的です。「言った言わない」の水掛け論防止がConfirmation、欠席者に会議内容を伝えておくことで今後の作業の効率化とコミュニケーションコストを抑えるAnnouncement、To-Doの5W1Hを明確にすることで実行漏れを防ぐのがReminder、そして、将来的なトラブル発生の際に正当性を主張してリスクヘッジを行うためのツールとするEvidenceがあります。

議事録のフォーマット

では具体的に議事録の取り方について触れてみます。まずフォーマットについては、人や会社それぞれで千差万別とも言えますが、基本的に私が教わり、今でも作成の作法としている方法は

(1) 会議の基本情報

(2) 会議の討議内容

を、正確かつ読みやすく記録する形式になります。恐らく、多くの会社でこのフォーマットが利用されているのではないか、と思います。

会社によっては、起承転結的に結論・決定事項を一番最後に持って来る方式を採られているようですが、要点だけを知りたい上席者・意思決定者が読むことを意識して、CCF(Conclusion comes first)、すなわち「最初に結論」を持っていく方が、後々、クイックに議事録を残した会議の要点を掴むことができ、読者フレンドリーな議事録になります。

たかがフォーマットと侮ることなかれ、読む人が、どこに何が書いてあるか分かることはとても大事です。これは、議事録の作り手からレビューを含めた読み手に回った時に痛感しました。

また、会議の発言から作成されるファクト情報とは別に、その会議の「所感」を備え書くケースも多いです。私見とはいえ、この会議を振り返っての発見事項や気付き事項を書くことは自分の意見を持つ練習になりますし、上位者が議事録を読む時の参考になったり、議事録作成者に対するポジティブな評価に繋がることが多々あります。

議事録作成のポイント① – Dos & Don’ts

議事録作成の難しさは、話を聞きながら手元に情報を書き留めていく同時並行的な作業が発生する点です。ほとんどのビジネスパーソンは、ボイスレコーダーで記録した内容を改めて聞き直して議事録を作成、のような悠長なことをする余裕はないと思います。よって、まずは会議の内容を聞き漏らさないことを第一として、特にその会議中の重要発言を逃さないようにすることが精度の高い議事録を作成するために必要となります。

但し、会議中、特に長い会議であればあるほど、聞き漏らさないように長時間集中し続けるのは不可能です。よって、メリハリをつけたリスニングが必要になりますが、発言内容を吟味し、重要性の観点から「書く必要のある内容かどうか」を整理すると以下のとおりとなります。

Dosの項目が欠けると、議事録がそもそもの目的を果たしません。一方、Dosの項目が網羅されていても、Don’tsに記載のある項目が議事録の中に含まれていると、どうしても読みにくくなったり、また内容が冗長的になりがちです。

議事録も成果物ですので、やはり「シンプル」でかつ「ロジカル」なものが求められることを考えると、Don’tsに関連する項目が会議中に話されている間は、これまで高めてきた集中力を少し休ませることができる時間、と捉えることが集中力を長持ちさせる秘訣です。

また、高品質な議事録は情報の「正確性」とともに、内容の「網羅性」が具備されている必要があります。しかし、網羅性が論点になると、ここで誰もが直面する悩ましい問題が発生します。自分の知らない用語などが飛び交う会議では、往々にして自分自身では発言内容の重要性や必要性の取捨選択ができないケースが発生します。この場合はどうすればいいのか?

議事録作成者の取捨選択が必要とはいえ、判断ができないケースでの模範解答は、

「全て発言を書き取り、議事録に反映すること」

になります。その理由としては、読み手は書かれた内容が「合っている・間違えている」は気付きやすいのですが、記載漏れ、すなわち漏れなく記載されているか、については気付かない可能性があるからです。

また、取捨選択でその取り扱いを迷った情報を念のため織り込んだ形で議事録を作成し、上長のレビューを受けた際、場合によっては「これは不要」と指摘を受けるもあると思います。但し、そこで内容の重要性を理解できれば、その経験が次回に活きてくるため、このようなケースは特に引け目を感じることなく、進んで指摘を受けることにしましょう。意外と自分が大事だと考えた内容と、読み手が大事だと思った内容にズレがあることに気付くことができます。

なお、余談ですが、個人的な経験から、基本的に数字情報は重要情報になるケースが多く、この情報を抜け漏れなくすべて記述すれば、大きな記載漏れは防ぐことができる印象を持っています。

画像:freepic

議事録作成のポイント② – スピード重視

高品質な議事録とはどういうものでしょうか?会議内の重要な発言が漏れなく正確に記載され、それも構造化されて読みやすいことだ、と多くの方が想像されると思います。

しかしながら、そのようなクオリティーの高い議事録が作成されたとしても、会議の2週間後に出てくると、その議事録自体の価値は激減します。また、議事録完成を先延ばしにしていると、どんな人でも時間が経てば経つほど会議の内容を忘れてしまうため、会議終了時点では理解していたことがあやふやになったり、記憶が曖昧になってしまう可能性があります。これは書き手もそうですが、読み手も同様です。

よって、議事録作成にはスピードも求められます。言うなれば、「議事録は鮮度が命」というわけです。仮に理解が曖昧な内容についても、会議直後であれば他の方にも確認するのが容易ですし、また会議で決まったTo-Doについても、いち早く周知することができます。

個人的には会議開催日中にドラフトを作成し、レビューに回すくらいのスピード感が必要ではないか、と思いますが、他にも仕事を抱えている場合、遅くとも翌朝にはドラフトを提出するのが得策だと思います。

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議事録作成のポイント③ – 内容の構造化

以前、クライアントのPJで、管理業務を任されている派遣社員の女性の方が会議での議事録作成を任され、私がその議事録のレビューワーとしてアサインされたことがあります。先述のとおり、コンサルファームでジュニアの作成した議事録のレビューで苦労した経験もありましたから、その女性の方には事前に

「議事録は分かる範囲で書いていただければ結構ですし、粗い状態でもいいので早めに見せてください」

とお声掛けし、ある程度こちらで作成する心づもりでいました。しかしながら、上がってきた議事録のドラフトはとても読みやすく、うまく整理され、感動すら覚えました。読み終わってから、「この方、かなり優秀な方だな」と思った覚えがあります。

その議事録は、時系列ではなく、見事なまでに議題別・アジェンダ別に内容が整理されていました。

議事録のもう1つの難しさがこの「構造化して書く」ということでしょう。時系列ではなく、それぞれバラバラな情報を論理立てて整理・組み立て直すことです。有機的一体ではない、会議内で飛び交う様々な発言を自分なりの軸でカテゴライズする能力、ピラミッドストラクチャー的な体系再構成力など、いわゆる「コアコンサルスキル」が問われることになります。

そして、この構造化のためには、少し抽象的な表現になりますが、会議の”文脈”を掴む必要があります。会議のポイントが見えないと、構造化もできませんし、そもそも、重要な発言を見落とすことに繋がってしまうのです。

構造化する力は、一朝一夕で身につく能力ではありませんが、すこしでも工夫して議事録を作成するコツとしては、

  • 議題別・アジェンダ別に内容を整理する(時系列にこだわる必要なし!)
  • 一番大事なのは「決定事項」と「実際のアクションはどうなるのか(To-Do)」であるため、これを常に意識することで、カテゴライズしやすくなる
  • 決定事項やTo-Doに至る経緯を拾うことで、多くの場合、自然と内容の構造化が可能となる
  • 質問と回答は密接に繋がるので、ここは必ずセットにして記載する(但し、Q&Aをひたすら並べるのではなく、議題別に整理は必要)
  • 往々にして結論やTo-Doが明確にならないまま、その議題が終わるケースもあるので、その情報が発言の中に出てこなければ、勇気を出して必ず会議の場で確認する

『言うは易く行うは難し』です。最初の頃は1時間の会議の議事録を書くのに、その会議に要した時間の倍以上掛かることもあります。でも、多くの方が通ってきた道で、議事録はあらゆるPJで作成される成果物ですので、今後、幾度となく議事録を作成する機会があり、早い段階でノウハウを身につけておくに越したことはないです。

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議事録作成のポイント④ – 読みやすさの追求

最後は読みやすさです。実は、読みやすい議事録とは、作り手としてもシンプルに書くことであり、「言い回しをどうするか」等で悩まなくていい、という意味で省力化にも繋がります。ここでもシンプルに書くためのポイントを列挙してみます。

  • 5W1Hを明らかにする(誰、いつ、何を、は文面上、特に具体化する)
  • 指示代名詞は言葉を補って書く(具体的な内容や資料名を記載する)
  • 基本は箇条書きで短文(目安としては、1文3行ぐらいまで)
  • 余計な内容や表現は究極まで省く(一言一句を吟味し、「これ以上省けない」というレベルまで)
  • 「結論は先に!」を徹底する

ちなみに、議事録作成で読みやすさを考える際、役職の高い人(かなり上の上司やクライアントであればキーパーソン)に読んでもらうにはどうすればいいか、を考えることが、かなり有効なセルフレビューになります。一般的に、上位者になればなるほど、普段から目を通す文書が多いこともあり、パッとみて分からなければ、どれほど重要な会議の議事録であっても読むことなく、参加者に個別でヒアリングする方法が採られます。

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改めて考える議事録作成スキルの重要性

Newspicksの2020年4月18日の記事「【教訓】コロナが生む職場問題、5つの解決策」の中で、この議事録に関して以下のようなコメントがされていました。

リモートワークが生んだ問題の一つに、コミュニケーションエラーが挙げられる。
(途中省略)
急なリモート・シフトによる一時的なエラーというより、コミュニケーションに必要な国語力のレベルが、ひと昔前に比べて落ちている懸念があるからだ。実際、塩野氏(注:経営共創基盤の塩野 誠氏)が働くコンサルティングの現場でも、「議事録を取るのが苦手な人が増えている」という。若い人なら、業界用語を覚えていないという理由も考えられるが、「考えを言語化・構造化する力と、人の意図を読み取る力が、少し低下しているのではないか」と危惧している。

Newspicks – 2020年4月18日「【教訓】コロナが生む職場問題、5つの解決策

議事録作成自体は地味な「作業」ですが、その人の力量を図るリトマス紙になるくらい、マルチな能力が求められます。議事録がうまく取れない人が頭が悪いというわけではありません。ただ、議事録を書くには知識と経験、そして一種のスキルが必要ということです。

会議の中で飛び交う専門用語や話の内容が分からないと、まず議事録が書けません。
一方、専門用語は理解でき、話の内容が分かる場合でも、一言一句メモを取っていると、メモが追い付かず、情報が漏れてしまいます。
たとえ全部をメモできても、情報が整理されていなければ、議事録は作成しづらいし、そのまま時系列で書けば、大変読みづらい議事録になってしまいます。よって、速記力よりも、発言者と発言の重要ポイントを逃さないヒアリング力、さまざまな情報を頭の中で整理する力がないと、精度の高い議事録を生み出せないのです。
そして、情報を整理して構造化できる力があったとしてもなお、素早くアウトプットするスピード力がなければ、鮮度の良い議事録を生み出すことができません。
加えて、極限まで表現を研ぎ澄まし、シンプルで読みやすい議事録にする表現力も求められます。

つまり、「高品質な議事録を作成できる」ということは、ビジネスパーソンとして必要なスキルすべてを備え持っていることを証明することになるほどの意味があります。この、議事録作成力の応用バージョンとして、忙しい上司に30秒で伝えたいことを伝える「エレベータートーク」になる、とも考えられるほどです。

画像:freepic

『将来、AIが進歩して議事録の自動作成がなされるか』というと、一言一句精密な文字起こしは容易にできるでしょうが(実際、既に今でもできるアプリもあります)、AIが会議内容の構造化までできるようになるとすれば、それは、

「人間のコンサルタントが不要になる未来」

と同義になると思います。ただ、AIが高品質な議事録を作ることはかなり難しく、それは人間にしかできない能力なのではないかと、私は確信しています。


参考文献:

  1. “読み手を引き付けるストーリー展開”, 2020年8月9日コラム
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